留置権・先取特権・質権・抵当権の4種のいわゆる「担保物権」には3つないし4つの共通する性質があると考え、それを「通有性」とか「通融性」と呼ぶのが、いわゆる「担保物権の通有性」の議論である。「総則」への飽くなき探求を続けるパンデクテン法学がいかにも好きそうな議論であるが、実はこの「通有性」は真の「通有性」ではない。その証拠に、学説においては、上記の「通有性」を認めた上で、今度は物権ごとにこの通有性の有無を検討する、ということが一般に行われている。つまり、「通有性」を有しない「担保物権」があることを自ら告白してしまっているわけである。また、もしこれらの「通有性」が真の「通有性」なのであれば、立法技術的には「担保物権総則」を置いてそこに規定すれば済むはずであるが、実際の民法典(の編別)はそうはなっていない(後述)。要するに、「担保物権の通有性」は「総則」たりえないいわば不完全な「通有性」なのである。
この立場を極端まで推し進めると「担保物権の通有性」無用論とか、さらには「担保物権」概念無用論とかが出てくるわけであるが、私はそこまでは思わない。民法規定や思考の整理枠組として「担保物権の通有性」の議論はある意味かなり優秀であり、使い方さえ間違えなければ残しておいて良いものだと思う。そして、使い方を間違えないためには、「担保物権の通有性」は民法規定から帰納的に導かれる学問的な構築物に過ぎないということを十二分に認識しておく必要がある(「担保物権の通有性」によればこうだ、というような演繹的な使い方は基本的に間違っている)。その点を明らかにするのが、この小論の目的である。
さて、一般によく行われるいわゆる「担保物権の通有性」の議論は、簡単にまとめると以下の表のようなものである。
| \ | 付随性 | 随伴性 | 不可分性 | 物上代位性 |
| 留置権 | あり | なし | あり | なし |
| 先取特権 | あり | あり | あり | あり |
| 質権 | あり | あり | あり | あり |
| 抵当権 | あり | あり | あり | あり |
少し解説すると、「担保物権の通有性」とは付随性・随伴性・不可分性・物上代位性の4つをいい、このうち留置権については随伴性と物上代位性が認められず、それ以外の担保物権にはすべての通有性が認められるということである。このうち付従性とは被担保債権と担保物権の間の成立上・存続上の牽連性(債権が成立しなければ物権は成立せず、債権が消滅すれば物権も消滅すること)をいい、随伴性とは被担保債権と担保物権の間の承継上の牽連性(債権が移転すれば物権も移転すること)をいうから、付従性を「被担保債権と担保物権の間の牽連性」という意味で広く捉えた上で、随伴性を付従性に含ませる考え方もある(実際、そのほうが思考の経済になる)。また、留置権の随伴性については、「あり」とする考え方と「なし」とする考え方の両方があるが、被担保債権が移転されても留置物の占有が移転しなければ留置権は消滅するから(民法302条)、「なし」と考えるほうが妥当である。これに対して、質権については「あり」と考えるほうが妥当であるように思う。なぜなら、質権成立(民法344条)後の占有喪失は権利の消滅事由とならないし(民法345条は効力規定ではない、大判大正5年12月25日)、動産質の場合にも民法352条の規定は対抗要件の規定であって効力要件の規定ではないからである。したがって、いずれにせよ質権そのものは被担保債権の譲渡に伴って移転する(但し、登記や引渡し+占有継続がなければ対抗はできない)と考えるべきである。なお、根抵当権は抵当権の付従性をわざと緩めたものであるから、制度趣旨からして当然に(原則として)付従性がないのだが、単純化のため表には反映させなかった。また、「不可分性・物上代位性とは何か」という話はのちほど出てくるので、ここでは省略する。
(占有の喪失による留置権の消滅)
第三百二条 留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって、消滅する。ただし、第二百九十八条第二項の規定により留置物を賃貸し、又は質権の目的としたときは、この限りでない。
(質権の設定)
第三百四十四条 質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。
(質権設定者による代理占有の禁止)
第三百四十五条 質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。
(動産質の対抗要件)
第三百五十二条 動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない。
先程の表が言わんとしているのはこの程度のことであるのだが、あの表をそのまま覚えようとするのはいかにもナンセンスである。なぜなら、別にあの表を覚えなくとも、民法の条文構造を知っていれば、この結論は簡単に導き出せるからである。当方も、かつてあの表を闇雲に丸暗記しようとしたことがあるが、数日経ったら綺麗さっぱり忘れてしまって徒労に終わった。いうまでもなく、記憶というのは、まず理解があって初めて付いてくるものである(理解があれば自然に長期記憶に入る)から、まずは導き方を理解すべきなのである。数学の公式と同じである。
それではどうすれば良いかというと、まずは、民法の物権編の全体構造をじっくりと眺めることである。そうすると、同編の第7章から、留置権→先取特権→質権→抵当権という順序で章が置かれていることに気づくはずである。ここがミソである。なぜ留置権を冒頭に置いたかというと、立法技術的にそうするのが都合良かったからなのである。
具体的に見てみよう。出発点となるのは、留置権に関する民法296条である。ここでは「留置権の不可分性」という表題の下に、
(留置権の不可分性)
第二百九十六条 留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる。
と規定されている。このうち、「債権の全部の弁済を受けるまでは、〔…〕物の全部についてその権利を行使することができる」という部分が、いわゆる不可分性という性質である。もっとも、規定を素直に読む限り、権利の性質というよりは権利行使の態様というほうが妥当かもしれない。いずれにしても、その先にある先取特権総則の305条は、
(先取特権の不可分性)
第三百五条 第二百九十六条の規定は、先取特権について準用する。
と定め、先程の296条を準用しているのである。ここまででまずは、不可分性が留置権と先取特権の「通有性」であることが導かれる(中間結論①)。
次に、先取特権総則にある民法304条を見ると、「物上代位」と題して、以下のような定めが置かれている。
(物上代位)
第三百四条 先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
2 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。
これも権利の性質というより権利行使の態様というべきものであるが、そもそも先取特権の本質は債務者破産時の優先弁済権であり(民法303条)、この優先弁済権は(払渡前・引渡前の差押えを要件として)「目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物」(売買代金や賃料や損害保険の保険金等)や「目的物につき設定した物権の対価」(地上権や地役権の対価等)にも及ぶというのが、いわゆる物上代位性である。
以上のことを前提とした上で質権と抵当権の規定を眺めると、質権総則にある民法350条も、抵当権総則にある372条も、前述の296条(留置権の不可分性)と304条(先取特権の物上代位性)を準用している。
(留置権及び先取特権の規定の準用)
第三百五十条 第二百九十六条から第三百条まで及び第三百四条の規定は、質権について準用する。
(留置権等の規定の準用)
第三百七十二条 第二百九十六条、第三百四条及び第三百五十一条の規定は、抵当権について準用する。
したがって、以上のことから、不可分性と物上代位性が先取特権・質権・抵当権の「通有性」であることが導かれる(中間結論②)。
そして、中間結論の①と②を合わせれば、不可分性は留置権・先取特権・質権・抵当権の「通有性」であり、物上代位性は先取特権・質権・抵当権の「通有性」であるということになる。
それでは、付従性(被担保債権と担保物権の牽連性)についてはどうか。この点については、実は、「担保物権であるから付従性がある」というのは論理的に正しくない。なぜなら、どちらも「債権が物権の法律要件とされていること」の帰結であるからである。つまり、担保物権性と付従性は論理的には同列の命題であって、どちらかがどちらかの帰結となるという論理関係にはない。言い換えれば、或る物権は被担保債権の存在を要件とするから担保物権なのであり、それと同じく、その物権は被担保債権の存在を要件とするから付従性があるのである。
この点につき、今度は、先程とは順序を逆にして抵当権から見ていこう。
(抵当権の内容)
第三百六十九条 抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
2 地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。この場合においては、この章の規定を準用する。
このうち、「抵当権者は、債務者又は第三者が〔…〕債務の担保に供した不動産について〔…〕権利を有する」という部分が、債務(被担保債権)の存在が抵当権の法律要件であることを示している。
そして、日本の民法学は、解釈論上、ここから上述の3つの牽連性を導き出しているわけである。第一に、債務なければ抵当権なし(債権の存在が抵当権発生の要件である)、という成立上の牽連性、第二に、債務なくなれば抵当権なくなる(債権の消滅が抵当権消滅の要件である)という存続上の牽連性、第三に、債務移転すれば抵当権随伴する(債権の移転により法律上当然に抵当権も移転する)という承継上の牽連性である。しかし、これはあくまで解釈論上の帰結に過ぎず、明文で定められているわけではない。
このことは、ドイツ法の担保物権と比較するとよくわかる。ドイツの抵当権(Hypothek)は以下の通りドイツ民法1113条により定められている。この規定は日本民法の369条とよく似ており、被担保債権の存在が抵当権の法律要件とされている。
§ 1113 Gesetzlicher Inhalt der Hypothek
(1) Ein Grundstück kann in der Weise belastet werden, dass an denjenigen, zu dessen Gunsten die Belastung erfolgt, eine bestimmte Geldsumme zur Befriedigung wegen einer ihm zustehenden Forderung aus dem Grundstück zu zahlen ist (Hypothek).
(2) Die Hypothek kann auch für eine künftige oder eine bedingte Forderung bestellt werden.
ところが、抵当権の詳細について定めた個別規定(ドイツの規定は日本の規定よりもかなり詳しい)を見ると、実際には、日本の抵当権におけるような意味での付従性(Akzessorietät)はむしろほとんどないと言ったほうが正確である。ドイツ民法1153条により随伴性(承継上の牽連性)のみは完全に肯定されるものの、ドイツ民法1163条によれば、原因行為の瑕疵等により債権が発生しなかった場合にも抵当権は発生するし(成立上の牽連性の否定)、弁済等により債権が消滅した場合にも抵当権は存続するのである(存続上の牽連性の否定)。そしてその際、抵当権の帰属が法律上当然に債権者から所有者に移転するのであって、これを所有者抵当権(Eigentümerhypothek)という。
§ 1153 Übertragung von Hypothek und Forderung
(1) Mit der Übertragung der Forderung geht die Hypothek auf den neuen Gläubiger über.
(2) Die Forderung kann nicht ohne die Hypothek, die Hypothek kann nicht ohne die Forderung übertragen werden.
§ 1163 Eigentümerhypothek
(1) Ist die Forderung, für welche die Hypothek bestellt ist, nicht zur Entstehung gelangt, so steht die Hypothek dem Eigentümer zu. Erlischt die Forderung, so erwirbt der Eigentümer die Hypothek.
(2) Eine Hypothek, für welche die Erteilung des Hypothekenbriefs nicht ausgeschlossen ist, steht bis zur Übergabe des Briefes an den Gläubiger dem Eigentümer zu.
そして、その論理的前提として、ドイツ民法889条の規定により、所有権と抵当権の混同は生じないものとされている(混同が生じてしまうと所有者抵当権は成立し得ない)。日本民法179条と真逆の規定である。
§ 889 Ausschluss der Konsolidation bei dinglichen Rechten
Ein Recht an einem fremden Grundstück erlischt nicht dadurch, dass der Eigentümer des Grundstücks das Recht oder der Berechtigte das Eigentum an dem Grundstück erwirbt.
(混同)
第百七十九条 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
2 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
3 前二項の規定は、占有権については、適用しない。
そして、(不発生や消滅により)債権が存在しなくなった状態で所有権と抵当権が同一人に帰すると、抵当権は法律上当然に「土地債務」(Grundschuld)に転化する、と定めているのがドイツ民法1177条である(これに対して、物上保証人弁済の場合には債権が物上保証人に移転するので(ドイツ民法1143条1項1文)、所有者抵当権のまま残存する)。
§ 1177 Eigentümergrundschuld, Eigentümerhypothek
(1) Vereinigt sich die Hypothek mit dem Eigentum in einer Person, ohne dass dem Eigentümer auch die Forderung zusteht, so verwandelt sich die Hypothek in eine Grundschuld. In Ansehung der Verzinslichkeit, des Zinssatzes, der Zahlungszeit, der Kündigung und des Zahlungsorts bleiben die für die Forderung getroffenen Bestimmungen maßgebend.
(2) Steht dem Eigentümer auch die Forderung zu, so bestimmen sich seine Rechte aus der Hypothek, solange die Vereinigung besteht, nach den für eine Grundschuld des Eigentümers geltenden Vorschriften.
§ 1143 Übergang der Forderung
(1) Ist der Eigentümer nicht der persönliche Schuldner, so geht, soweit er den Gläubiger befriedigt, die Forderung auf ihn über. Die für einen Bürgen geltende Vorschrift des § 774 Abs. 1 findet entsprechende Anwendung.
(2) Besteht für die Forderung eine Gesamthypothek, so gilt für diese die Vorschrift des § 1173.
「土地債務」とは何かについては、ドイツ民法1191条が規定している。なお、土地債務は、「債務」という名称にもかかわらず、物権編に規定がある歴とした物権である。
§ 1191 Gesetzlicher Inhalt der Grundschuld
(1) Ein Grundstück kann in der Weise belastet werden, dass an denjenigen, zu dessen Gunsten die Belastung erfolgt, eine bestimmte Geldsumme aus dem Grundstück zu zahlen ist (Grundschuld).
(2) Die Belastung kann auch in der Weise erfolgen, dass Zinsen von der Geldsumme sowie andere Nebenleistungen aus dem Grundstück zu entrichten sind.
実は、抵当権の定義規定である1113条1項と土地債務の定義規定である1191条1項を比較すると瓜二つであり、わずかに「zur Befriedigung wegen einer ihm zustehenden Forderung」(負担の受益者が有する債権に因る履行のために〔土地から一定の金銭を支払わなければならない〕)という文言があるかないかだけの違いである。要するに、土地債務とは、抵当権から被担保債権の存在という法律要件を外したものである(この点は、後述の1192条1項において「dass die Grundschuld nicht eine Forderung voraussetzt」とより明確に規定されている)。したがって、当然の帰結として、債権と物権の間の牽連性も根こそぎ取り去られている。これを「非付従性」(Nichtakzessorietät)という。
ところで、ドイツの実務においては抵当権はほとんど用いられない。日本で不動産を担保に銀行から金を借りようと思えば抵当権を設定するのが普通であるが、ドイツで不動産を担保に銀行から金を借りようと思えば土地債務を設定するのが普通である。これを「保全土地債務」(Sicherungsgrundschuld、担保たる土地債務)という。なぜ抵当権ではなく保全土地債務が用いられるかというと、抵当権の場合には上述の通り原因行為(消費貸借契約)に瑕疵があったりすると法律上当然に所有者に移転してしまうが(有因性)、土地債務であれば規定上原因行為が前提とされていないので(無因性)、勝手に所有者に移ってしまったりしないからである。法律効果としても、ドイツ民法1192条1項により、土地債務には抵当権の規定が準用されるものとされてきたので、抵当権の代わりに土地債務を用いることには問題がない。そうであれば、銀行の合理的な意思決定として抵当権ではなく土地債務を用いようという話になるのは当然である。
§ 1192 Anwendbare Vorschriften
(1) Auf die Grundschuld finden die Vorschriften über die Hypothek entsprechende Anwendung, soweit sich nicht daraus ein anderes ergibt, dass die Grundschuld nicht eine Forderung voraussetzt.
(1a) Ist die Grundschuld zur Sicherung eines Anspruchs verschafft worden (Sicherungsgrundschuld), können Einreden, die dem Eigentümer auf Grund des Sicherungsvertrags mit dem bisherigen Gläubiger gegen die Grundschuld zustehen oder sich aus dem Sicherungsvertrag ergeben, auch jedem Erwerber der Grundschuld entgegengesetzt werden; § 1157 Satz 2 findet insoweit keine Anwendung. Im Übrigen bleibt § 1157 unberührt.
(2) Für Zinsen der Grundschuld gelten die Vorschriften über die Zinsen einer Hypothekenforderung.
しかし、土地債務の無因性の帰結は余りにも債務者に酷なことがあるので、2008年のリスク制限法(Risikobegrenzungsgesetz = Gesetz zur Begrenzung der mit Finanzinvestitionen verbundenen Risiken)による改正によりこれが制限され、保全土地債務に関しては、土地債務の譲渡人に対して主張できた抗弁は、土地債務の譲受人にも主張できるということになった(上記1a項)。これにより、土地債務の無因性は一定程度の制限を受けることになったわけである。
ちなみに、物権行為の無因性(Abstraktionsprinzip)というのはドイツ法の名物の一つである。沿革的には、ドイツの物権行為無因論の起源はローマ法の握取行為(mancipatio)にあるとされるが、実際には、ゲルマン法のゲヴェーレ(Gewere)系統のものだろうという匂いがする。周知の通り、ドイツ人はゲルマン法のゲウェーレの法文化に基づいて事あるごとに「法律関係の外観と実体的な法律関係の一致」を要求し、しかもそれが(外観を実体に合わせる公示主義ではなく)それが実体を外観に合わせる公信主義というかたちで顕現する。公信主義というのは真の権利者よりも第三者保護を優先し、静的安全よりも動的安全(取引の安全)の優先する思想であるから、これはドイツ法の名物である物権行為の無因性とも親和的である。勿論、銀行が抵当権ではなく土地債務を用いるようになったのはそちらのほうが有利だからであるが、それが実務に定着したのは、それがゲルマン的気質に合致していたからという理由もあるように思われる。
やや寄り道が長くなったが、要するに、日本民法における抵当権の付従性というのは、民法そのものに明文の規定があるわけではなく、民法369条のいわば拡大解釈によって解釈論上導き出されているということである。そして、留置権・先取特権・質権の規定についても、同様の拡大解釈が可能な文言となっている。
(留置権の内容)
第二百九十五条 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。
(一般の先取特権)
第三百六条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
一 共益の費用
二 雇用関係
三 葬式の費用
四 日用品の供給
(動産の先取特権)
第三百十一条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の動産について先取特権を有する。
一 不動産の賃貸借
二 旅館の宿泊
三 旅客又は荷物の運輸
四 動産の保存
五 動産の売買
六 種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む。以下同じ。)の供給
七 農業の労務
八 工業の労務
(不動産の先取特権)
第三百二十五条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。
一 不動産の保存
二 不動産の工事
三 不動産の売買
(質権の内容)
第三百四十二条 質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
そして、通説は、上記の太字の文言の解釈論として、「付従性」という結論を導き出している。その結果、付従性も担保物権の「通有性」となるわけである(中間結論③)。但し、留置権について随伴性は「なし」と考えるのが妥当なことについては、既に述べた。
したがって、中間結論①②③を合わせた結論として「担保物権の通有性」が導かれた、quod est demonstrandum、ということになる。

